こんにちは、yasuです。

年末年始いかがお過ごしでしょうか?私は仕事に遊びに家事にと本当にバタバタしておりました。

今年は少しずつリサーチャーとしての培ってきたものを発信していきたいと考えています。
そこで調査の中でもあまり理解が進まない定性調査について少しずつ発信していきたいと考えています。

前回の記事では「定性リサーチャーとしてのスキルアップ~報告書作成における分析の仕方~」(https://www.happy-carrer.com/blog/374)として報告書作成における分析の仕方にフォーカスしてまとめてみました。

今回は定性調査でも重要な「モデレーション」について書いていきたいと思います。

定性調査における「課題」とは

さて、私が冒頭で定性調査の理解があまり進んでいないと感じている理由について簡単に説明したいと思います。まず、調査には大きく定量調査と定性調査の2種類があります。詳細については次のページでも見てください。

https://www.dm-insight.jp/column/qualitative-research1/
電通マクロミルインサイトさんが書いているのでなかなかの読み応えです。

この記事で注目して欲しいのは、上記の部分で定量調査は「数値」、定性調査は「言葉」で調査結果が表現されるということですね。

ビジネスの世界に限らず、数字の概念はほぼ世界共通なので30%と言えば、日本人であろうがアメリカ人であろうが韓国人であろうが「30%」の意味合いは同じです。しかし「言葉」というものは曖昧なもので受け取り手によって解釈がだいぶ異なってしまいます。

そのため定性調査の報告書は、定量調査よりも「よりロジカルに」「具体的に」「分かりやすく」表現されないといけないのです。これが本当に大変な作業でして、私もいまだに苦労の連続でございます。はい。

このように「言葉」を扱う定性調査ですから以下のような誤解が生まれてしまいます。

  1. 対象者はホンネを言わない
  2. 対象者の発言に矛盾が見られる
  3. 自分と同じように物事を考えてくれる

このように書くと「そんなわけないじゃん」と思うかもしれませんが、認識のどこかに上記のように考えているクライアント様は多いです。

まず、定性調査は主にインタビューを指すことが多いのですが、調査会社のパネルに登録していただいている方に「〇〇のインタビュー」に参加したい人を募集し、条件選定を行い、条件に合致した人に時間と場所を決めてインタビューに参加していただきます。このとき謝礼も提示されます。だいたい相場観として1時間あたり6000~8000円が多いように感じます。

そしてインタビュー当日に、モデレーター(インタビュアー)とインタビューが始まるのです。このとき、モデレーターと対象者は初対面がほとんどです。私のように長いことこの仕事をやっていると、「あ、以前のあのインタビューに参加した人だ」という出会いはあります。

で、上記の誤解なんですが初対面だから他人に本当のことは言わないだろうとか考えてしまう人がいます。これはちょっと考えればわかることですが、自分は友人や家族に対して常に「ホンネ」をしゃべっているだろうか?そもそも自分の本当の気持ちってそんなに把握しているもんなんでしょうか?

また、コンセプトの評価などで「使いたい」と言っていてもよくよく聞いているとあまり使わないだろうなと感じる人もいます。こういう人は「遠慮して婉曲表現を使っている」に過ぎないだけなのです。

そして、商品購入において低価格なものは買わずに質のよいものを買うと言いつつ、買っているものを聴くと安いものだったりします。これを聴いて矛盾していると指摘するクライアントがいます。しかしこれは調査する側と対象者の基準がずれているだけなので、矛盾ではないです。もっと言うと人は矛盾だらけの生き物です。その人にとって合理的な行動を取っているに過ぎないのです。

そして定性調査で特に多い誤解が「どんな条件だったらこの商品を買いますか?」と聞いたりすることです。これはクライアント側が調査対象者も自分と同じように真剣にこのテーマについて考えてくれると過剰に期待しているのですね。でも、参加していただいているのは普通の一般の人なんですよ。クライアント側の人間ではないので全然興味なくて当然ですよね。

ということで、いろいろと書きましたが、ホンネをしゃべってもらうことを期待して定性調査をするのは違います。www

定性調査に期待すべきこと

さてこんな身もふたもないことを書いてしまうと定性調査って意味ないじゃんって思われてしまいますが、そうではありません。定性調査は生活者の行動を把握しその理由を確認し意識を抽出していく作業なのです。

詳しくは「心脳マーケティング」(https://www.amazon.co.jp/%E5%BF%83%E8%84%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-%E9%A1%A7%E5%AE%A2%E3%81%AE%E7%84%A1%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%82%92%E8%A7%A3%E3%81%8D%E6%98%8E%E3%81%8B%E3%81%99-Harvard-Business-School/dp/4478502161
がオススメです。

人ってそんなに考えているわけではなく、無意識に行動していることが多いので、きちんと行動を抑えてその行動の理由を確認しつつ、その人に関するいろんな情報を集めて推察していくことでしか、その人のことは分からないのです。

人を真に理解するのは難しいですが以下の前提に立てば分析の役に立つと思います。

  1. 消費者の思考プロセスは合理的で直線的なものとは限らない
  2. 消費者はその思考プロセスを言葉で正確に表現できるとは限らない
  3. 消費者の記憶は正確であるとは限らない
  4. 消費者は自分の見たいこと知りたいことしか興味がない

この4原則は踏まえたうえで、対象者の発言をもとに行動から思考を把握し、その人の意識に迫っていくのです。

さて、これを踏まえたうえでタイトルの「モデレーションの極意」に迫っていきたい。

モデレーションの極意

定性調査において、インタビューすることを「モデレーション」と言います。そしてインタビューする人のことをモデレーターといいます。別にインタビューでも、インタビュアーでもいいと思いますが、専門用語なので簡単におさえておいてください。

で、モデレーションにおいて重要なことはこれです。

そう、

  1. 笑顔である
  2. 適度に声を大きく
  3. 対象者の話に相槌を打つこと
  4. インタビューフローを頭に叩き込んでおくこと
  5. 調査の背景・目的を把握し仮説を立てておくこと

が基本中の基本です。これが出来ていないでモデレーションするなんて時間とお金の無駄です。

1~3は対象者に話をしやすいように心地よい環境を提供することが目的で、4は対象者に時間内に何を聞くかをリストアップしておくこと、そして5はキーとなるポイントで必ず深堀するためです。

で、分析するときには下記を参考にしてください。
「定性リサーチャーとしてのスキルアップ~報告書作成における分析の仕方~」(https://www.happy-carrer.com/blog/374

あとはモデレーターはその対象者がそのテーマについて日常生活の中でどの程度優先順位が高いかを把握しながら質問をしていけば、分析しながらモデレーションすることができます。

多くのインタビューでは、「化粧品について」「自動車について」「ネット通販について」などという形でそのテーマについて深堀していくことがほとんどでありますが、そのテーマは生活者にとって生活の一部でしかないので対象者の人となりや生活環境をインタビューの前半で把握しておくことが何より重要なのです。

ワーキングママであれば時間がないのでどうやって効率化するかとかの意識が強くなるだろうし、専業主婦であれば節約志向が強くなるだろうとか分析の手掛かりになるのです。BtoBのインタビューでも重要で、管理職なのか一般の社員なのかでもだいぶ変わります。

モデレーターとしてはそのテーマについて深堀していくことがはもちろんですが、そのテーマが対象者にとってどれくらい重要なのかを押さえる質問は必須です。

ということで、長くなったので今日はここまで。

ほな

さよなら三角また来て四角

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事