こんにちは、yasuです。
ずいぶん、更新がサボってしまいましたね。今回はリサーチャーの中でも定性リサーチャーとしてのスキルアップについてまとめてみたいと思います。
で、定性リサーチャーとしてスキルアップにするにしても助けになるような書籍は少なくノウハウがあまり世に出ていないというのが現状です。そこで私がどのように分析しているのかのステップを公開したいと思います。
定性調査の種類
定性調査は大きく2つの手法が主流です。1つはフォーカスグループインタビューで、もう一つはデプスインタビューです。JMRAによれば定性調査の内訳は以下の通りです。コロナによってオンライン比率が高まっています。また、デプスインタビューが増えているように感じます。
で、今回の記事でフォーカスするのは「デプスインタビュー」についてまとめていきたいと思います。グルインについては別途やるかもしれません。
デプスインタビューの分析の仕方
ちなみに定性リサーチャーとしてのキャリアアップについては別記事に簡単にまとめています。以下にURLがあるのでお時間あるときにお目通ししていただければ幸いです。
リサーチャーとしてのキャリアを考える⑦~定性リサーチャーのキャリアの深め方~(https://www.happy-carrer.com/blog/361)
リサーチャーとしてのキャリアを考える⑧~定性リサーチャーのキャリアの深め方②~(https://www.happy-carrer.com/blog/367)
さて、今回の記事では上記記事の「リサーチャーとしてのキャリアを考える⑦」の発言整理から報告書作成に関するところに特にフォーカスしていきます。
まず、報告書を作成する前に必ずしておいて欲しいことは、以下です。
- 調査背景と調査目的の把握
- 対象者条件とグループの設定状況を把握
- インタビューフローを確認し何を聴取しているか把握
- 想定している仮説の把握
これぐらいは最低限理解しておくことが必要ですね。
あとは全てのインタビューに参加できればベストですが参加できなくても報告書をまとめていくことは可能です。
報告書作成前にいくつか下準備をしていきます。
手元に対象者リストと発言録を用意します。対象者リストは参加した人がどのような人であるかを簡単にまとめたものです。属性とかが一覧で見れるようになっているものです。
そして発言録とは以下のようなものがWordとかExecl形式で作成されていて、インタビューでの発言を拾っています。()内はモデレーターがプロービングしたものです。
※以下の発言録は私が勝手に作成したものです。
こうした発言録のファイルが対象者分存在します。例えば10人にインタビューしたのであれば10ファイル存在します。この発言録を整理していきます。具体的にはExcelなどに以下のようなまとめをしていきます。
表頭に対象者を並べていき、表側には調査項目をもってきます。今回呈示したものはだいぶざっくりとしているのですが、この表側はどんどん細かくしていくことが本当ですね。この表側を作ることができるのが定性リサーチャーとしての力量ですね。そして中身をどんどん埋めていきます。
これを私は発言整理と呼んでいますが、この発言整理で埋め切れない部分というのは、ヒアリングできていないところなので、聞き漏れと考えるか、途中でフローが変更になったか、インタビュー中に仮説が生まれてモデレーターが追加で確認したかは見極める必要がありますね。
ただ、定性リサーチャーがモデレーターにこの発言整理の表側だけでも共有できていれば、聞き漏れはかなり少なくなりますし、アウトプット思考でインタビューできるのでオススメですね。
発言整理を作る目的
さて、発言整理を作る目的なんですが、インタビューでは話の展開に応じてバラバラになりがちなので、それをしっかりとまとめること。そして、何となくこんな意見が多かったという感覚をファクトベースで整理するということです。
実はインタビューを見ている人にもバイアスがかかってしまっている場合があるのです。それは直近バイアスというものでついさっき見たインタビューのことが全体の評価と誤認しがちなんです。また、自分が見たいもの聞きたいものを強く意識してしまうのでそのバイアスを解くためのものだと思ってください。
そして活用の仕方として、この発言整理を縦に読むと対象者の思考回路を理解するのに活用でき、横に読むと対象者間での比較になるのです。特に横に読むことでスライド作成に非常に役立つと思います。
また、この発言整理の良い点はもう一つあり、分業化することが可能になるのです。発言録をこの発言整理のフォーマットに発現を転記していくだけならインタビューに参加していなくても作成することはできます。そうモデレーターは意外と忙しいのでこれを作成できないときもあります。そして組織的に取り組んでいくことができますね。
そしてこの発言整理さえあれば、例えインタビューに参加していなくても最低限のファクト整理をもって報告書を作成することができます。
しかし、それでも私は報告書作成者はインタビューに参加すべきだと考えています。というのも、この発言録作成→発言整理の作業工程でいくつか文脈がぶつ切りになっている可能性があることと、「聞かれたからあえて回答したこと」も並列で載ってしまっているということです。
例えば、美容がテーマのインタビューで「アンチエイジング」に対してそれまで発言がなかった人にあえて「アンチエイジングできる商品」の利用意向を問い、「アンチエイジング」に対する見解を聴いたところで、あえて聞かれたから回答したということでその人の本心でない可能性が大いにあるのです。つまり、その人の本心からの言葉ではなくディベートしている可能性を見極めないといけないのです。
そのインタビューにおける雰囲気をしっかりと把握することがインタビュー参加では重要な要素なのです。
具体と抽象の行き来
さて、発言整理でベースとなるファクトを整理した上で、調査目的を達成するために分析を行っていきます。特に定性調査ではラダリングという方法を活用していきます。ラダリングとは「どうして」「どんないいことがあるの」「何のために」などを組み合わせて、その人にとっての上位概念と下位概念を明確にして、機能的価値や情緒的価値を浮き彫りにしていくものです。
例えば、美容をテーマにしたとき
(上位概念)
誰かに自分の美を認めてもらいたい
↓↑
加齢に伴う衰えをカバーしていきたい
↓↑
アンチエイジング商品を使いたい
(下位概念)
↓の矢印は「~だから」という接続詞を入れるといいですね。
「誰かに自分の美を認めてもらいたい」「から」「加齢に伴う衰えをカバーしたい」
↑の矢印は「~することで」を補うといいですね。
「アンチエイジング商品を使う」「ことで」「加齢に伴う衰えをカバーしたい」
という関係ですね。こうした関係を見極めていくことが重要です。
行動ベースでしっかりとファクトを抑える
「人の本質とはその人の言葉ではなく、行動に出てくる」というくらいですので、行動をしっかりと抑えることが重要です。例え、「価格よりも高品質」が重要と発言していても実際に買っているものが「価格が安いもの」というケースは往々にしてあります。
なので、何を買っていますか、何を使っていますか、いつ頃買ったのか、どこで買ったのかをちゃんと抑えたうえで「どうして」そうしたのかをきちんと深堀できていればよく、それを辿ることがとても重要なのです。
こうした事実をしっかりと把握していければ、カスタマージャーニーでもパーセプションフローでも作成していくことはできます。
まとめ
このやり方を徹底していけば、定性調査のアウトプットを仕組み化すると同時に標準化していくことは可能だと私は考えています。ところで、なんで私がこういうノウハウ的な要素を公開しているか?というと、これをそのままやったところで私に追いつけるとは到底思っていないのと、業界の発展のためですね。
料理でもレシピ通りにやったからと言ってうまい料理ができるわけでもないし、譜面通りに曲を演奏したからと言って感動するわけでもない。
ただし、レシピや譜面があれば最低限の品質は担保できると思います。そのような意図からですね。
あとは、そのリサーチャーやモデレーターのセンスと経験とスキル次第ですかね。
この記事が少しでも定性リサーチャーとしてのスキルアップやステップアップにつながれば幸いです。
ほな
さよなら三角また来て四角