こんにちは、yasuです。

前回の記事「リサーチ初心者のためのアンケート分析方法」でリサーチ初心者のためのアンケート分析方法を紹介しましたが、今回は定性調査(インタビュー)の分析方法をまとめていきたいと思います。

まず、定性調査とは、対象者から紡がれる言葉や行動、そのときの感情などを文章や写真などで表現されたデータを収集する調査のことです。インタビュー調査や日記調査、行動観察調査が該当します。

特に、インタビュー調査は1on1形式のインデプスインタビュー(IDI)、対象者が複数名の座談会形式のフォーカスグループインタビュー(FGI)などが多いです。ちなみに会社によってはインデプスインタビューは、対象者のより深い上位概念を抽出するものだとして、そこまで深い話を聞かない場合はパーソナルインタビューなどと表現することがあります。

で、今回はインタビュー調査にフォーカスしてお話をしたいと思います。

インタビュー調査とは

ここでインタビュー調査の形式を簡単に説明すると、モデレーターというインタビューを取り仕切る司会者みたいな人がいて、インタビューを受ける対象者が1人以上いるという状態です。そして、そのインタビューの様子を裏側でクライアント含め関係者が見ています。だいたい1セッションあたり60分、90分、120分くらいでしょうかね。

イメージとしては警察ドラマの取調室を思い出していただければと思います。そして今回はモデレーターではなく、インタビューを裏側から見る関係者の方を対象とした投稿となります。

ちなみにインタビュールームをイメージしやすいようにURLを紹介しますね。
https://wellco.jp/room/solution.html

本題に入る前に簡単に用語チェックをしておきます。

単語

モデレーター・・・インタビューの司会者
対象者・・・インタビューされる人
インタビューフロー・・・インタビューする内容の大筋がまとまった資料
プローブ・・・ある内容について深堀すること
デブリ・・・デブリーフィングのこと。インタビュー後に関係者で調査結果を共有するミーティングのこと

観察するときの注意点

さて、インタビュー調査を裏側で観察するときの注意点をまとめていきたいと思いますが、どうしてこんなことを書くのか?と疑問に思う方もいるでしょう。

・ただ聞いているだけでしょ?
・特に難しくなさそう
・話を聞くのは好き!

みたいに思われる方もいらっしゃいますが、普通の友だち同士の会話であれば、全然いいのですが、マーケティングに活用するための消費者理解のための話を聞くということなので、意外と難しいです。

理由としては、

1、何等かの示唆をだすことを前提として聴くため
2、情報量が多く自分の中で処理できないため
3、自分の都合のいいように捉えてしまうため
4、言葉に惑わされてしまうため

ということが主のように思います。

そう、60分程度の話でも非常に内容が豊富なのでどういうことなのかを理解し解釈するのは大変な知識労働なのです。

ということでインタビュー調査観察・分析のテクニックが以下です。

テクニック

1、調査目的を把握し何にケリをつけたいかを把握しよう
2、対象者がどんな人であるかを確認しよう
3、インタビューフローでどんなことを聴取するか確認しよう
4、対象者の発言一つひとつをメモするな
5、対象者の言葉を受け止めるのではなく、何を伝えたいかに注意しよう
6、対象者が発言しなかったことにも注意しよう
7、対象者の中での優先順位を理解しよう
8、(できれば)表情や態度に注目しよう
9、インタビュー内での態度変容に注目しよう

ということで上記を簡単に説明しますが、1は当たり前のことですが、調査目的を把握しどんなことが分かればよいかはきちんと理解しておきましょう。そして調査が終わった後にどんな意思決定をするかも把握しておきましょう。これを前提にインタビューを聴くようにしてください。

次に、対象者がどんな人であるかは事前に把握しましょう。調査会社から対象者リストという対象者の属性をまとめた資料がもらえるので、そこは見ておきましょう。

調査は経営やマーケティング、営業活動において何等かの意思決定をするために行うものですから当然インタビューにお呼びする対象者にも条件があります。男性なのか、女性なのか、20代なのか、あるいは特定の商品を使用している人なのか、などその人の背景知識は把握しておきましょう。

そして、3つ目はどんなことを聴くかをインタビューフローを見て想定しておいてください。調査目的を達成するために何を聞いているのかをきちんと確認しておいてください。

実際に聞いてみると

さて、インタビュー前の準備としては上記の1~3でしたが、インタビュー中に聞く態度ということで、4の対象者の発言を全てメモしようとしないでください。多くのインタビューでは、プロの書記さんが発言録を作成してくれています。なので、発言全てをメモしようとするのは無駄ですし、おそらくできません。

そして、5の対象者の発言を受け止めるのではなく、対象者が我々に何を伝えようとしてくれているのかに注意を払いましょう。例えば、普段の買い物行動のインタビュー調査で、「私は価格よりも品質を重視しているの。安い商品は信用できない」と言っていたとして、実際に買っている商品が安い価格帯のものだとしたときに、その人にとっては購入している商品が安いと認識していない可能性もありますし、品質を重視したいという態度なのかもしれません。

人は言動がすべて一致していることなんてほぼほぼないです。自分をよく見せようとしていたり、自分のダメな部分から目を背けていたり、単に自己評価が高かったりするものです。つまり、言葉だけでなく、言葉の裏に隠された本音をしっかりと見抜くようにしましょう。

そして、モデレーターにいろいろと質問されてすらすらと自分の言葉で回答できる人はそうそういないです。例えば、ドラッグストアに化粧品を買いに行って商品Aというものを買いましたが、そのときに商品Bではなく商品Aを購入した理由をロジカルに答えられる人なんていないですし、自分の肌について悩んでいることを表現するのも難しいものです。

ということで相手が何を伝えようとしているかを理解しましょう。

また、6の対象者が発言しなかったことにも気を配ると良いです。

モデ:化粧水を購入するときにどんなことを気にしていますか?
対象者:化粧水なら自然成分であるか?ということと、いっぱい使いたいので量が多い方が良いです。

ということで、香りの話が出てきていないですよね。となると、この対象者の中で香りの優先順位は高くないということが推察されます。そう、発言していないということは、相手にとって優先順位が低い(=高くない)ということでもあります。

そして、7の対象者の中の優先順位を理解しようというのは6にも通じるのですが、例えば子育て世代の30代の女性であれば、子どもの教育費などがかかるため自分の美容代や洋服代にはお金の余裕がなければそこまで優先順位を高くすることができません。そう、インタビューを聴いているとそのテーマに沿っていろいろと喋ってくれるので、すごく皆さん意識しているんだなと思うかもしれませんが、普段はそんなに意識しないものです。なので、そもそも美容とかにどれくらい興味あるの?車にどれくらい関心もっているの?と考えて聴くことは重要ですね。

次に8の表情や態度ですが、今はコロナ禍の影響もありオンラインインタビューが主なので表情や態度はわかりづらいですが、オフラインであれば相手の表情の変化についても着目しましょう。相手が嬉しそうにしゃべっているのか、あまり興味なさそうにしゃべっているのか?非常に重要です。興味のあるテーマや話題であればいろいろとしゃべってくれますが、そうでない場合は反応が鈍くなります。

最後に9のインタビュー内での態度変容に注目しようですが、インタビュー調査ではコンセプトを呈示したり、商品を見てもらったりして反応をうかがうものも多いです。そうすると、今までの発言を翻して意見を変えることがあります。どうして意見が変わったのか、どういうポイントが響いたのかを詳しく観察しましょう。これが定性調査のだいご味です。

そして上記を通じて、聞きそびれた、あるいは聞ききれていないなどであれば、インタビューの最後の方で追加質問をモデレーターにお願いすることができます。そこで自分の仮説や分析で足りないものを補完するようにしてください。

ヒアリングシートを用意するのもあり

さて、インタビューはいろいろと話をしてくれるので、調査でフォーカスしている内容以外のことも気になってしまうものです。あれもこれもと追加で聴いてしまうととっちからった内容になってしまいます。そこでインタビューフローをもとに、簡単にヒアリングシート(自分用メモ)を作成してしまうのもいいかもしれません。

私はクライアントが定性調査の経験が少ないようであれば、ヒアリングシートを作成したりすることもあります。項目としては、

・対象者No
・性別/年齢
・家族構成
・仕事
・知っている商品
・利用したことのある商品
・今利用している商品とその理由
・商品選びで大切にしていること
・美容意識/健康意識/おしゃれ意識など
・コンセプトの評価とその理由
・この人の特徴を一言で
みたいなものをパワポで作成し印刷して手元においてもらうようにします。
これをするだけで初心者の人はインタビューを聴きやすくなり、デブリーフィングに参加しやすくなります。

ということで、これらを意識して定性調査に参加すると非常に意義のある時間になるかと思います。

ほな

さよなら三角また来て四角

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